アドウェイズ社長の岡村陽久がユーザーの悩みや疑問に答える人生相談シリーズ、第8回。
早速、読者からの質問を・・・と思いましたが、クリスマス特別号と題しまして、イブが来るたびに思い出すという、岡村の「四畳半」時代を振り返ります。岡村の口から、いま明かされる真相とは果たしてー。
「本当は四畳半で暮らしたくなかった」
高山:聞くところによると2007年に四畳半のアパートへ引っ越したということですが。
岡村:忘れもしない、2007年1月22日。アドウェイズは下方修正を出しました。我々でいう、「07(ゼロナナ)ショック」(※注)のはじまりです。ケジメとして、役員報酬を8割カットして、前年度の住民税を払えるだけもらったんです。でも、それだと家賃が払えないんで引っ越すことにしました。
(※注)「07(ゼロナナ)ショック」
2007年、アドウェイズの広告収入の中心となる顧客はクレジットカード会社やキャッシングカード会社だったが、上限金利の引き下げにより各社の広告費が半減。アドウェイズは新入社員の大量採用を進めていたことも併せて赤字が大幅に拡大。新規事業の撤退や社内体制の改革だけでなく、岡村自身も役員報酬を8割カットし、四畳半風呂なしアパートに移り住んだ。
高山:それまで住んでたところは、どのくらいの広さで家賃はいくらだったんですか?
岡村:タワーマンションで、広さは70平米、家賃は30万くらいでしたね。
高山:そこから四畳半とは思い切りましたね。1LDKくらいでよさそうですけど。
岡村:今だから言います。四畳半に住むなんて、自分も夢にも思ってませんでした(笑)。全部うちの管理部のせいなんですよ!いざ引っ越し先を探すときに管理部に手伝ってもらったんですけど、物件を探した担当社員が実はスーパー総務だったんですよ。
高山:はぁ。それ、どういうことですか?
岡村:管理部の担当社員に「社長どんな間取りですか?」と聞かれて、少しカッコつけて「イチから出直す。ボロボロの木造アパート。で、間取りは四畳半、風呂なし、トイレ共同」と、言っちゃったんですよ。まあ、そんな物件は西新宿のオフィス街にはないだろうと計算の上で、最終的には「一番狭くてワンルームしかありませんでした!」って話になって、俺は四畳半に住みたかったのに!まあ、仕方ないなあ、ああ、四畳半住みたかったのになぁ~って按配に落ち着くかなぁと(笑)
高山:(笑)。ちょっとズルくないですか・・・。
岡村:はい、本当にすいませんでした。でも、あなたに言われたくないですね。
高山:・・・。
岡村:で、1時間後に携帯がなって「社長ありました。3万円です」って。そこで、おいおいおい、ちょっと待てよと。西新宿のオフィスから徒歩3分って条件もあるぞと。都内ならいくらでもあるけど、そこ絶対忘れてるだろって。「じゃあ、内見行きますか?」って言われたんで、行ったらあったんですよ・・・。で、本当にあったねって。「はい、社長のために頑張って探しました。私、物件検索が趣味なんですよ」って(笑)。
高山:でもそれ、よくやったな!って褒める場面じゃないですか!(笑)
岡村:はい、本当にすいませんでした。
高山:・・・。
岡村:俺、大丈夫かなぁって、不安で無言になってたら、老人の方がアパートから出てきて担当社員と話してるんですよ。なんなんだろって見てたら、「社長が怪しすぎるので面接するそうです」と。その方、オーナーさんだったんですよ。
高山:入居に際して面接とは、なかなか審査が厳しい物件じゃないですか。
岡村:「なんで上場企業の社長さんがこんなとこ住むんですか?何か企んでませんか?」と、めっちゃ警戒されたんですけど、怠けた心を入れ替えるために、このアパートで修行したいんです!って、思わず言ったら「よし!それなら、わかった!」って。
高山:なんで道場へ入門みたいになってるんですか。もう、わけわかんない(笑)。
早朝に3人組の男が部屋に乱入!
岡村:翌日、俺、本当にあのボロボロのアパートに住むのかなぁって。オーナー、気が変わって審査落としてくれないかなぁってボーッとしてたら、管理部の担当社員が来て、「社長、無事に契約できました」って突然、南京錠渡されて。え、なにこれ?って言ったら、「アパートの鍵です」と。「あの部屋は外からしか施錠できないんです」と。
高山:それ、体育館の備品倉庫みたいな鍵の作りですね。
岡村:はい、まさに。それで僕もやっと覚悟ができて。すぐに部屋の家具から贅沢品まで、ベッド以外は全部処分して引っ越したんですよ。南京錠握りしめながら、再スタートだ!って、すげー気合い入りました。
高山:希望に満ち溢れてるじゃないですか!
岡村:いや、でも初日で後悔しましたよ(笑)。とにかく部屋に隙間が多くて、めっちゃ寒い!1月~2月は、寒くて全然寝られないし、ガチガチ震えて身体がずっと力んじゃうから、めっちゃくちゃ筋肉痛になるんですよ。で、その筋トレの効果で脂肪がすげー勢いでドンドン落ちてっちゃうから、より寒さが増して。俺、凍死するのかなぁって、あのとき、くだらない意地を張らずにワンルーム探してって言えばよかったなぁって、そうだ・・・次は寒さに強いシロクマかアザラシに生まれ変わりたいなぁって、そんなことばっかり考えてました。
岡村が実際に住んでいた木造アパート。正直、ぜんぜん違和感がない。
高山:なるほど。寒さに強いのは四畳半のおかげだったんですね。冬でもTシャツにアウター1枚の理由がわかりましたよ。ちなみに、それ以外にも困ったことってありますか?
岡村:とにかく、信じられないトラブルが連発して。朝6時、寝てるところに3人組の男がいきなり乗り込んできて。「こら!起きろ!」って。寝ぼけてたんで、ああ、ついに迎えが来たか、フランダースの犬みたいに天使は来なかったなぁと思ってたら、「寝ぼけてんじゃない!お前、不法滞在の誰々だろ!」って。えええ~!って一気に目が覚めて。いや、一応社長なんです・・・って答えたら、「社長がこんなとこいるかバカ、来い!」って。どうやら2階に住んでた外国人と間違えられたようで、危うく強制送還でした。
高山:ちょっとシャレにならないですね(笑)。相当古いみたいですけど、地震とかは大丈夫なんですか?
岡村:それが、めちゃくちゃ揺れるんですよ!もの凄い!初めて地震きた時は、もう、こりゃ倒壊するな、危ない!って、ホント身の危険を感じて。すぐに窓あけて、裸足のまま隣家の塀飛び越えて、庭へ入ろうとしたんですけど、隣家のお婆さんが、なぜか平然としてるんですよ。「すごい地震ですよ!危ないですよ!!」って叫んだら「いまテレビに速報流れてるけど、震度2だよ・・・」って。単にボロボロすぎて、ものすごい揺れてただけだったという。
高山:地震よりも、五分刈りの裸足の男が塀をよじ登って来た方が怖かったでしょうね・・・(笑)。
四畳半で体感した意外な効能とは
高山:じゃあ、トラブル続きで、すぐに引っ越したんですか?
岡村:いや、なんだかんだで2年くらい住みましたね。
高山:ながっ!(笑)
岡村:これも、ぶっちゃけると、1日でも早く引っ越ししたかったんですよ!で、モーレツに働いて、業績も回復して、よっしゃあ!引っ越すぞ!ってなったんですけど・・・。四畳半に住んでることが業界で噂になっちゃってて、会う人会う人に「四畳半すごいっすね~」って言われて、僕も「いや、まだまだです。精進します」とかついついカッコつけちゃって、かなり引っ越しづらい状況になったんですね。
高山:まさかの四畳半ブランディング!僕もね、肥満ブランディングしちゃってるんで、痩せられないんですよ。
岡村:・・・。いや、でもね、経験した方がいいですよ。極寒ゆえの謎のダイエット効果もあったんですが、それよりも心のデトックスにホントなりましたから。たとえばですけど、部屋の水道からはキンキンに冷えた水しか出ないんですよ。お湯を使いたかったら、毎回毎回ガスコンロでわざわざ沸かさないといけない。
高山:それって、どういうことですか?
岡村:当たり前のことに、すごく感謝できるようになるんです。蛇口をひねれば、お湯が出るありがたさ。冬は家が暖かくて、夏は涼しい。働く場所があって、仲間がいる。なんでもないようなことに、幸せを感じるんですよ。
高山:四畳半を経験してなかったら、今頃、高級車に乗って、高級時計つけて、ブイブイ言わせてたでしょうね。恐ろしいですね。
岡村:間違いないですよ。四畳半を経験したことで、心がキレイになりましたよ。
高山:「岡村陽久著 四畳半デトックス」をおくりバントから出版しますね。
岡村:それ売れなかったら、責任とって四畳半に引っ越してくださいよ。
高山:やめましょう・・・(笑)
いま、もっとも四畳半が必要な男、おくりバント高山。アパートに憑く妖怪にしか見えない。
四畳半時代の同棲相手が登場!
岡村:最後にですが、カッコつけて四畳半に住んでるフリをしていましたが、実は、まったく住みたくなかったのが真相でした。みなさま、誠に申し訳ありませんでした!ただ、ひょんなことから四畳半に住んだことで、人間的に一回り大きくなれたのは確かです。今日、すべてを話したことで、本当に心がスッキリしました。
高山:ちょっと勝手にスッキリして終わらせないでくださいよ(笑)。実は今日、特別ゲストをお招きしてるんで。
岡村:え?誰ですか?
高山:四畳半時代の同棲相手の方です。どうぞ!
岡村:えっ、マジで!?
まだまだ続く四畳半トーク!次回の更新をお楽しみに!
編集・構成:小沼朋治
写真:上野朝之