9月某日 アドウェイズ社長室
高山:この「勝手にしやがれ」も今回で49回。もう少しで50回ですね。
西久保:約4年間かあ。短いようで長かった。折角だし50回記念の催しを企画してもいいかもしれないですね。
高山:岡村さんの好きな竹原ピストルとか呼びたいですね!
西久保:いいですね!「カモメ」とか聞いて、前後不覚になるくらい泣きたい!
岡村:盛り上がってるところ悪いけど「勝手にしやがれ」は今回で最終回です。
西久保・高山:!?
高山:……49回で終わるって縁起も区切りも悪いし、せめてあともう1回やりませんか?それとも、今回で終わらせたい理由が何かあるんですか?
岡村:そもそも4年も続くと思ってなかったんですよ。そこは、もうごめんとしか言えないです。ちなみに、僕が第1回目で話したこと覚えてますか?
西久保:サイバーエージェントの藤田社長がNIKKEIに掲載した記事が炎上したことに対して、藤田社長の本心を勝手に想像しながら言及した回ですよね。初っ端から色んな意味でキレてたと記憶しています。
岡村:そうそう。それで初心に戻って今、世間を騒がせている話題をチェックしてみたんですよ。
前澤社長は損得勘定で会社を売るような人じゃない
西久保:最近で言うとZOZOの前澤社長の退任とか……。
岡村:まさしくそのことに関して、今回はどうしても物申したいことがあって。そしてそのままゴールテープを切り、有終の美を飾りたい。
高山:前澤社長と言えば世間では「売り逃げ」なんて囁かれていますけど……。
岡村:正気ですか?
高山:えっ。
岡村:実は僕と前澤社長は、過去にお食事会をしたこともある間柄なんですよ。と言っても、15年前に1回だけなんですけどね。
高山:……15年前。
岡村:でも、僕は以前から一度飯を食えばその人の性質が7割分かるスキルを持ってるんです。だから言える。あの人は自分の損得勘定で会社を手放すような人じゃない。
西久保:岡村さんの男気スカウターが発動したわけですね。
Yahoo!と組むことでZOZOの株価は5年後10倍になる(見立て)
高山:とは言え実際に自分の会社を手放しているわけですし……。
岡村:……高山さんの視野は鳥ですか?現状、ZOZOのユーザーは20〜30代前半がメイン。それに対してYahoo!のユーザーは30〜40代の我々世代。Yahoo!と組むことでZOZOを利用する客層が大幅に広がるんですよ。
西久保:ZOZOを世に普及するための施策でもあったんですね。
岡村:それだけじゃない。Yahoo!と組む事でポイント系がより充実する筈です。きっと。連結子会社になったからこそYahoo!はそこまでのことをしてくれるんですよ。
西久保:なるほど。
岡村:そうなってくると、ZOZOの株価は間違いなく上がるはず。きっと。Yahoo!と連携を組むことで売り上げが増加し、株価は3倍に。さらにポイント系の恩恵を受けプラス3倍、社員のモチベーションが上がったりと、その他諸々で1.1倍。
高山:本当ですか……?
西久保:じゃあ今、前澤社長が売却によって手にした額が2400億円と言われてるけど……。
岡村:株価は5年後に10倍は上がるはずだから、2兆円は損したことになりますね。そもそも売り逃げっていうのは、例えば800円の価値のものを1000円で売ること。将来2兆4000億円になる株を2400億円で売ることは、売り逃げとは言いません。広辞苑にもそう書いてあります。
岡村:それでも売却したのは、ZOZOの市場価値を上げるため。ZOZOを誰よりも愛している前澤社長だからできた決断なんですよ。
高山:でも、そこまでZOZOを愛しているのなら、既存の社員が勤めているZOZOを退任しなくても良かったのでは?
前澤社長は顧客のために売却し、社員のために退任した
岡村:……あの会見、見ました?ちなみに僕は全部見ました。
高山:前澤さん泣いてましたよね。
岡村:僕はあの涙を見て全てわかったんですよ。
西久保:全て、とは?
岡村:前澤社長がZOZOに在任し続けることで、ZOZOには親分が2人いることになります。社員も、前澤親分とYahoo!の川邊親分の2人の親分がいたんじゃどっちのいうことを聞けばいいのかわからなくなってしまう。自分の子どもとも言える社員に、悩まず健やかに成長して欲しいという思いから、退任という苦渋の決断をしたんだと思います。これもおそらく7割の確率で当たっているはずですね。
西久保:子の成長を想う親の気持ち……。
岡村:前澤社長が涙を見せたのは、記者から社員に対しての質問が出たときだったんです。「愛ゆえの決断ではあるものの、長年一緒に戦ってきた社員に『社長は逃げた』と悲しい思いもさせたくない」という葛藤が涙となって現れたんじゃないでしょうか。前澤社長は顧客のために売却して、社員のために退任したんです。
高山:なんで岡村さんもちょっと泣きそうなんですか?
岡村:僕も一応これでも社長なんで少しは気持ちがわかるんですよ。でも、こんなこと、前澤社長は野暮だから言わないと思う。だから社長の端くれである僕が代わりに言っておきます。そして、最後に前澤社長にはこう伝えたい。
拝啓 前澤友作様。そしてZOZO社員の皆様
岡村:待って、これも言っておきたい。
西久保:あれ……岡村さん、泣いてる……?
高山:泣いているところ大変恐縮ですが、これ、全部岡村さんの想像上の話ですよね。
岡村:おおかた、7割は合っているはずです。
西久保:おおかた7割。
高山:おおかた7割。
岡村:前澤社長、本当にお疲れさまでした。あと、この「勝手にしやがれ」も本当にお疲れさまでした。今までありがとう。そして……ありがとう。
西久保:あ……本当に終わるんだ。
これまで長きに渡り、ご愛読いただいた読者の皆様、ありがとうございました!またどこかでお会いしましょう!
完
構成・執筆:いちじく舞