岡村陽久の勝手にしやがれ

あなたの相談を岡村流「勝手な解釈」で解決。ITのことから、世の中、男女、不条理まで

【第27回】中卒ヤンキーに人生の選択肢を与える? アドウェイズ岡村が元ヤンたちと「第0新卒」について語る

 

アドウェイズ社長の岡村陽久が、ユーザーの悩みや疑問に答える人生相談シリーズ、第27回。この夏の東京は21日連続で雨の日が続いていたが、アドウェイズの会議室でも雲行きが怪しい話が繰り広げられていた。中・高卒者向けのインターンシップ「ヤンキーインターン」を展開する会社「ハッシャダイ」の社長がアドウェイズ岡村の元に訪れたからである。自らも中卒であるアドウェイズ岡村が彼らにかける言葉とは。そして「ハッシャダイ」とはどんな会社なのだろうか。世の中の中卒・高卒の方々はもちろん、大卒も専門卒も帰国子女も最後までお見逃しなく。

 
 
8月某日 アドウェイズ社長室にて
 

 

岡村:お足元が悪い中、ご足労いただいて、どうもありがとうございます。で……今日は僕にお話があるとかないとか……

 

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先日アドウェイズ岡村は、「NEXT STAGE TOKYO」という非大卒と企業を繋げる新しい就活イベントにパネルディスカッション形式で登壇したのだが、そのイベントを共催していたのが株式会社「ハッシャダイ」であったのだった。

 

久世:お世話になっております。先日はどうもありがとうございました。改めましてご挨拶をさせていただきますと、わたくし株式会社ハッシャダイの久世大亮と申します。本日は岡村さんにお伝えしたいことがあり、お伺いさせていただきました。あの時は時間も少なく、ほんのちょっとしか喋れなかったので……

 

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彼の名前は久世大亮(23)。パッと見、どこにでもいそうな好青年だが、株式会社ハッシャダイを立ち上げた“代表取締役社長”である。

 

岡村:ごめんなさい、その前に……。目の前にいる人たちがちょっと怖いんですけど……。殴り込みにでも来たんですか? 見るからに元ヤンですよね?

 

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久世:……怖がらせてしまってすみません。彼らの風貌は見たまんま怖いかもしれませんし、確かに元ヤンなのですが、僕たちは喧嘩をしにここに来たわけではないんです。

 

岡村:というと…?

 

久世:僕らはいま、「中卒」についての取り組みをしているんです。その事業を今後行っていくゆえで、「IT業界での中卒の先駆者」である岡村さんに一言挨拶をしなければならないと思い、本日お伺いさせていただきました。

 

岡村:そう…だったんですか……。確かに僕は「IT業界での中卒の先駆者」ですが…。怖い人たちにはあまり慣れてないので、少し動揺してしまいました…。

 

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身の危険が迫っているのかと悟ったアドウェイズ岡村は、急遽おくりバント高山を電話で呼び出し隣に座らせた。ちなみにおくりバント高山はいかにも喧嘩が強そうな風貌であるが、ヤンキーを見ると中学生の頃にカツアゲにあったトラウマを思い出し、気弱になってしまうのだった。

 

岡村:それで……どんな取り組みをやっているんでしょうか? まさか、怖いヤンキーの支援とかじゃないでしょうね?

 

久世:さすが岡村さん、その通りです。 

 

岡村:は……?

 

 

「ハッシャダイ」とはどんな会社なのか?

 

 

岡村:最近はヤンキーが少なくなってきて、安心して深夜のコンビニに行けるような世の中になったというのに……ヤンキーを増やすなんて、とんでもない! 

 

久世 :いや、違うんですよ岡村さん、僕らはヤンキーに選択肢を与えているんです。

 

岡村選択肢?

 

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ヤンキーに選択肢を与えていると発する、株式会社ハッシャダイの久世社長。彼曰く、地方に在住のヤンキーには多様性がなく、将来を選択する自由がないのだという。

 

久世:僕らハッシャダイは、主な事業として、中・高卒者向けのインターンシップ「ヤンキーインターン」を展開しています。これは実際の企業でインターンとして働きながら社会勉強をすることができる仕組みで、インターン生には食事や住まいなど、生活インフラを無償で提供しているんです。

 

岡村「ヤンキーインターン」ですか……しかも無償なんですね。

 

久世:はい。「ヤンキーインターン」の対象は、地方在住の16歳から22歳までの中・高卒者。“熱意”がある元ヤンの上京を、僕らは応援しているんです。ちなみにこのような“新卒よりも早く社会に飛び出た勇気ある彼ら”を 「第0新卒」と定義しています。

 

岡村:なるほど……ヤンキーに東京での仕事を与えることで、人生の選択肢を与えているんですね。でも、どうしてこのような事業を始めたんですか? まさかNPOとかではないですよね? 

 

 

友達の更生をしようとしたら、それが事業に繋がった

 

 

久世:はい。隣に座っている二人は地元の友人なのですが、最初はこいつらを更生させたかったんです。いわゆる地元のヤンキーで、クズみたいな生活をしていたので……

 

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左から藤川氏、右は近藤氏。「こいつらはクズだった」と語る、久世社長の旧友たちだ。二人とも以前はスーツを着て仕事をする想定が出来なかったと語るが、今はスーツ姿がよく似合っている。

 

久世:最初は二人を営業として雇って会社を起こしたんですけど、うまく進んでどんどん人が集まってきて……。それで、元ヤンの人材は価値があるなと思ったんです。今後の日本には二人のような「第0新卒」の人材が必要なのではと。

 

岡村:なるほど。すごくいいお話ですね。もともとは人材紹介をやろうということではなくて、二人に営業をさせたかったと。ちなみにお二人は“クズみたいな生活”をしていたとのことでしたが、一体どんな生活だったんですか?

 

藤川:僕は、運送の仕事をしながら暮らしていたんですけど、休みがあるとスロットやパチンコ。たまにボーリング……といった典型的な地元のヤンキー生活をしていました。

 

岡村:ああ……藤川さん、典型的な不良の顔してますもんね。

 

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藤川:よく言われます(笑)

 

岡村:そのときの久世さんの姿を見てどう思ってたんですか?

 

藤川:久世は高校の時までは一緒に遊んでいた友達だったのに、彼だけが大学に行っちゃったんですね。それで激変して……。僕は何も変わっていなくて…正直うらやましかったです。その頃は“お金を持っている人=悪”みたいなイメージがあったんですけど、久世にはそういう感情も抱いてました。

 

近藤:また、僕は新聞配達と鉄拳をずっとしていて……。

 

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画面上でもリアルでも殴っていたと語る近藤氏。友達に医学部を受けると行って新聞配達のアルバイトをしていたが、蓋を開けてみればゲーム三昧の毎日だったいう。

 

近藤:僕は「自分は肉体労働しかできないのかな」と思っていました。諦めようとしていた時に、藤川が久世から声をかけられたことを知って、何年かぶりに久世に連絡したんです。こういう話聞いたんだけど、僕も一緒にやらせてくれへんかと。

 

岡村:自分が持っていたプライドとかは捨ててってことですか。

 

近藤:そうですね。捨てて、心機一転です。自分からアクションをしなかったら、俺の人生ここまでだなと思いまして……。

 

岡村:めちゃめちゃカッコいいですね! それって100人中99人はできないと思うんですよ、自分との葛藤で。相手を認めて、あいつの方が頑張ってるし俺も頑張ろうってなるって、これ実はすごい大変なことですよね。

 

近藤:そうですね、僕の人生で一番頑張ったことだと思います。

 

岡村:いやいや、これからの人生、頑張ることが山ほどありますよ(笑)

 

 

ハッシャダイにはどういう人材が集まっているのか

 

 

岡村:気になったんですけど、「ハッシャダイ」には、どういう人材が集まっているんですか? どうしても中卒や高卒って、勉強もできない仕事もできない、“中途半端なやつら”だと思われるじゃないですか。僕もそうだったので、気持ちはよくわかるんです。

 

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藤川:隣にいる水谷が、実際に「ヤンキー・インターン」で社会経験を積んでいるインターン生です。実際にお会いした方が早いと思い、今日は連れてきました。

 

水谷:今日はよろしくお願いします。僕は高校卒業後、ラーメン屋さんに就職したんですけど、その頃は暴走とか喧嘩とか、結構やんちゃをしていて……。ハタチくらいになったら自分も周りも落ち着くんだろうなと勝手に思ってたんですけど、なにも変わらなかったんです。それで、ふと気付いた時に「このままじゃヤバイな」と思って。で、友人が久世さんのことを知っていて、ヤンキー・インターンの話をつなげてもらったんです。

 

この動画を見て、水谷氏は自分からヤンキー・インターンに通いたいと思い、久世社長に連絡をとったそうだ。現在彼は、営業職のインターンをしながら自分の人生を見つめ直している。

 

岡村:いつか変わりたい、いつか変わりたいとずっと思っていて……。でもどう変わっていいかわからなかったということですね。

 

水谷:そうですね。本音を言うと、地元のしがらみとかめっちゃキツくって。もう本当、東京行くしかないと思ったんです。

 

岡村:でも、東京に来てからの仕事も辛くないんですか? 環境が一気に変化して、ついていけないとかもあると思うんですけど…。

 

水谷:インターンに参加する前の自分の生活が本当にイヤだったんです。自分は底辺だと感じていて。だから、自分が元々いたところに比べれば今の環境の方が全然良いなと思っています。同じような生活をしていた人生の中で、新しいことに挑戦するってことだけで楽しいんですよね。

 

岡村:でもさ、でもさ……正直な話、営業職ってめっちゃ辛いじゃないですか。僕だって、4年間営業やってて、5回も飛んですますからね? 辞めたくなったりしないんですか?

 

水谷:たとえ辞めて前にいた場所に戻ったとしても、僕らって未来がないんですよ。それが逆に僕らの強みだと思っていて。例えば大学に行って、普通の会社に就職して、営業に配属されていたら、絶対に諦めていたと思うんですよね。僕も含めて、ハッシャダイのヤンキー・インターンには「あそこには戻りたくない」という人がたくさん集まっているんです。

 

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京都出身の水谷氏は、写真の通り相当のイケメンであるが、女性と会話をするのは少し苦手なのだそうだ。ただ、見た目とのギャップにますます女性は心を奪われていくのだとか(藤川氏談)

 

岡村:ポテンシャルがめちゃめちゃ高いんですね。でもなんで、元々東京に出てこようという気持ちがなかったんでしょうか。みなさん以外にも、まだまだ世の中にはくすぶっているヤンキーや元ヤンの人たちってたくさんいると思うんですよ。 

 

藤川:ぼくら、地元を出たことがなかったんですよ。東京に遊びに行くなんて発想もなかったですし……

 

近藤:一歩を踏み出す勇気がなかったんだと思います。僕らって京都に住んでいたんですけど、隣の大阪ですら遊びに行くことが一年に一回あるかないかくらいだったんです。びっくりするくらいコミュニティーって狭いんですよね。

 

岡村:コミュニティーが狭いなっていうのは、当時から気付いていたんですか?

 

近藤:全然気付いていなかったです。東京に出てきてから、いかに狭い世界で暮らしていたのかなと……山科区(京都の地元)が世界のすべてでした。

 

藤川:もし自分の世界を変えたいと思っている人がいるとしたら、街を出るとかでも何でも良いんで、何か日常を変えて欲しいなと思いますね。諦める前に、一回チャレンジしてほしいなと。

 

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ハッシャダイが紹介するインターン先は、営業職の他にもプログラミングの仕事もあるそうだ。プログラミングのプの字も知らなかったヤンキーだが、0から教えるとかなりのスピードで技術を習得していくという。 

 

 

ハッシャダイがやっていることは儲からない?

 

 

岡村:今まで聞いたお話って、すごい良いお話だと思うんですけど、これって、ぶっちゃけた話、儲からないですよね? 中卒・高卒とかより、大卒を紹介した方が儲かるじゃないですか。

 

久世:はい、実際に利益はほとんど出ていません。 ただ、誰もやっている人がいないんで僕がやるしかないのかなと。僕は周りの起業家の人とかに比べると頭が良くないので、“わかりやすく世の中のためにいいこと”をしてイキってみようって思っているんです。

 

岡村:まあ確かに、日本でもまだ誰もやってないですもんね。

 

久世:そうなんです。カッコ付けて言うと、第0新卒の市場を作りたいんですよ。で、5年後10年後くらいに、世の中の企業がそこでもビジネスってできるんだと気付いてくれれば嬉しいですね。

 

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久世社長が着ているTシャツ「HASSYADAI Tシャツ」は非売品である。どうしても欲しいという人は社長に直接連絡してみてはいかがだろうか。(@ycareer_kuse

 

久世:ちなみにアドウェイズさんって、中卒・高卒を採用したりしているんですか?

 

岡村:それがですね……。僕も以前、採用をしたいなと思ったことがありまして。ただ、壁にぶつかったんです。

 

久世:と、言いますと……

 

岡村リクナビのような媒体がないんですよ。中卒・高卒用の。なんと、学校をひとつひとつ訪れて、先生に紹介してもらわなきゃいけないらしいんですよね。それを自分達でやろうとしたらめちゃくちゃ大変だなと。なので、ハッシャダイさんのような会社が現れて、すごいなと感心しているんです。

 

アドウェイズ社としては、やる気やポテンシャルなどの採用基準を満たしていれば中卒・高卒のような“第0新卒”はウェルカム。大卒はたくさんの企業がとろうとしてるんで、ライバル多すぎなんですね。もちろん大卒には優秀な人がいっぱいいますが、中卒・高卒のなかにも優秀な人はいる。今がチャンスかなとも思っています。

 

久世:ぜひ、お力添えさせていただければと……。

 

岡村:ありがとうございます。ちなみに中卒がなれない職業って、3つあるんですけど…。なんだと思います?

 

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中卒・高卒は転職活動にも不利。履歴書を一目見て、中途半端だと思われてしまいます。と、中卒社長であるアドウェイズ岡村は切なく語る。

 

岡村日銀総裁と、警視総監と、東大の学長。この3つはどんだけ中卒・高卒が頑張ろうとなれないんですが、これ以外はなれるんですよ。総理大臣にもなれるし、上場企業の社長にもなれちゃいます。

 

久世:確かに、その通りですね。

 

高山:(まあ、医者とかは無理っぽいけどな……)

 

岡村:まあ僕が言いたいこととしては、第0新卒のことを知った企業は、おもしろいことをやっているなと感じて一度は採用すると思うんです。ただ、インターンとして来た人材が二ヶ月で辞めるとすると、その企業は第0新卒を一生採用しないと思うんですよね。

 

ここ5年は、第0新卒を採る企業を増やすことが大事じゃないですか。要は、自分だけ就職できればいいのかっていう話ではなくて、第0は第0で団結しなければならないんです。来年も第0は増えるし、今後もっと増えていく。約50万人の未来を切り開いていかなければならないんですよ。インターンとして働いているみなさんには、自分たちが未来を作っていると思って頑張ってほしいなと。中卒社長からの、ちょっとしたアドバイスです。

 

元ヤン一同:心に染みるアドバイス、ありがとうございました!

 

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最後に記念撮影をして、本対談は終了。

 

なお、株式会社ハッシャダイでは、東京以外に在住で、且つ、地方出身の若者に対し、東京での「職・食・住」を無償で提供することで、彼らの社会進出や自己実現の支援を行っています。これはハッシャダイの理念に共感いただいた、多くの企業様からご支援をいただき、食・住などのサポートをすることが可能となっています。

 

インターンを希望の方はこちら→
メール:t.sugiyama@hassyadai.com
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40uvi1849z

担当:杉山

ハッシャダイに採用についてのお話をしたい企業様はこちら→
メール:y.onawa@hassyadai.com
電話:03-5468-0850

→担当:大縄

 

 

次回もお楽しみに!

 

 

編集・構成:長橋諒

写真:morimi