アドウェイズ社長の岡村陽久が、ユーザーの悩みや疑問に答える人生相談シリーズ、第30回。2014年11月に始まった本ブログも、スタートから早3年、今回で祝30回目を迎えたが、特に祝いなどはせず、今回岡村は「喫茶店」について語りたいことがあるのだそうだ。全国各地様々な喫茶店に赴いたアドウェイズ岡村だが、特に新宿歌舞伎町の喫茶店にはよく通っているらしい。「喫茶店があったから、俺はグレなかった……」そう語る岡村が教える「新・喫茶店の歩き方」とは。
僕は、スタバには絶対に行かないんですよ
岡村:喫茶店が好きなんです、とにかく。中学生の頃にはじめて「コロラド ※」に行った時から今に至るまで、僕の人生を語るには喫茶店抜きには考えられません。
※株式会社ドトールコーヒーが運営するコーヒー専門店
喫茶店について意気揚々と語るアドウェイズ岡村。語る場として岡村が選んだこの場所は、西新宿にある喫茶店「COFFEE HOUSE MAX」であり、打ち合わせの際によく使っているという。
おくりバント高山:はい。それで今日は、喫茶店にあまり行ったことがない方に向けて、喫茶店の素晴らしさについて語りたいということでしたが。
思わず二度見をしてしまうほど派手な格好をしているおくりバント高山だが、彼もまた喫茶店フリークのひとり。自分の子供たちには、原宿のパンケーキではなく純喫茶のフルーツパフェを食べさせて育てているそうだ。
岡村:そうなんです。急に語りたくなって……。
高山:急すぎませんか……。
「この喫茶店に来たら、大体はハムサンドとアイスオーレを頼みますね」と語るアドウェイズ岡村。ここのハムサンドのみならず、岡村は自分の口に入れるサンドイッチにはなんでも塩をかけるらしい。
岡村:まず初めに、喫茶店の良さを語る前に言いたいのですが……僕は、スタバには絶対に行かないんですよ。絶対に。
高山:え? えっと……それはどうしてですか…?
岡村:それはですね、スタバのコーヒーが一番美味いことを知っているからなんですよ。
高山:ごめんなさい。一応ツッコミをさせていただきますけど、一番美味しいのになぜスタバには行かないのでしょうか……。
岡村:色々な理由があるのですが……。一番の理由は、スタバのコーヒーは他の店とは違い、「香り」があるということです。僕はコーヒーに全然詳しくないし、味の違いは解らないけど、スタバのコーヒーから出てくる「香り」はすごいんですよ。
高山:はい。
岡村:ただですね……。香りに力を入れすぎているので、タバコが吸えないんです。タバコの匂いでコーヒーの匂いが消されてしまうので、スタバは全席禁煙なんですよ。
コーヒーを提供しているお店で「タバコが吸えるか吸えないか」っていうのは、僕にとってはかなり大きなところで。喫煙者にとってコーヒーって、タバコとセットで嗜むものなんですよ。
コーヒーを提供しているお店で「タバコが吸えるか吸えないか」っていうのは、僕にとってはかなり大きなところで。喫煙者にとってコーヒーって、タバコとセットで嗜むものなんですよ。
高山:たしかに……。僕も喫煙者なので解るんですけど、コーヒーを飲んでいると無性にタバコが吸いたくなりますものね。
岡村:はい。ちなみに「喫茶店」ってどうやって書くかというと、“喫煙しながら茶を飲む店” ※と書くんです。結局、僕は喫茶店に行きたいわけであって、茶店に行きたいわけではないんですよ。「喫茶店」が好きなんです。
※本来は、喫茶の「喫」は「茶を喫む(のむ)」という意味であり、喫煙とは一切関係がない。
なお、岡村が言う「茶店」とは、タバコが吸えない「カフェ」のことである。なお、敢えて繰り返すが、アドウェイズ岡村はコーヒーの詳しい味はわからない。
僕、実は、人のタバコの煙があまり好きじゃないんです
高山:スタバはタバコが吸えないので行かない、というのは解ったのですが、他の低価格帯のチェーン店は分煙になっているところも多いですよね。
岡村:そうですね……。決してそういったチェーン店を否定をする訳ではないのですが、ああいったところのチェーン系喫茶店は、最近の分煙ブームもあって、喫煙可能なエリアが狭いんですよね。そして、自分には椅子が硬く感じるんです。
高山:ほう。
岡村:基本的に、このようなお店の場合は、席数×回転率が重要になってくるため、喫煙席にも席をいっぱい詰めこむ傾向があるわけですよ。こうすると喫煙席は“密室状態”になり煙がこもりますよね。僕、実は、人のタバコの煙があまり好きじゃないんです。
高山:え……?
岡村:もくもくした空間が本当に嫌なんですよ。なので滅多にそのような喫茶店には行かないですね。
高山:そう、だったんですね。
岡村:はい。
高山:でもそうすると岡村さんがよく行く喫茶店って、広くてタバコが吸える店ってことになりますけど、回転率が低くてあまり儲からなさそうじゃないですか……?
岡村:と、思うじゃないですか。それがですね、逆なんですよ。
高山:逆……?
岡村:チェーン系喫茶店って、大体200円くらいでコーヒーが飲めるじゃないですか。だから回転率が命なんですよね。とはいえ、僕がよく行くような喫煙席が広い喫茶店は、コーヒー1杯500円以上のお店です。
高山:単価が高いから儲かるってことですね。
岡村:それだけじゃありません。実は、来ている客の意識が高いんです。
高山:意識が……高い?
岡村:僕がよく行くのは、会社から近い歌舞伎町の喫茶店なのですが、ここにいるお客さんって、めっちゃおかわりをするんですよ。椅子がゆったりしていて、長時間いれるんですが、単価を高くすることによって、意識が高いお客さんだけを集めることが出来るんです。
これは、一般的なチェーン店とは真逆の戦略。だから、売り上げもそんなに低くないはずなんです。
高山:そういうことだったんですね……。ちなみに岡村さんは普段、平均でどのくらいおかわりをするんですか?
岡村:行きつけの「ルノアール」に行った際とかは、アベレージは5杯ですね。2人で行くとすると、お会計は大体1万円くらいします。
高山:(飲み屋の会計じゃん……)
「ルノアールに行くことがあったら、アイスコーヒーと水出しアイスコーヒーを1つずつ頼んで、味の違いを楽しんでほしい。僕にはその違いがわかりませんけど」とアドウェイズ岡村は語る。写真は岡村が愛用している「ルノアールEdy」。
普段接することのない人たちが、うじゃうじゃいるんです
高山:先ほど岡村さんは“歌舞伎町の喫茶店”によく行くと言っていましたが。
岡村:そうですね。ことあるごとに歌舞伎町の喫茶店に行っています。しかも1人で。
高山:会社は西新宿なのに、なぜ西新宿ではなく、わざわざ歌舞伎町まで行くのでしょうか。
岡村:そうですね……。例えばカフェとかに行く時って、友人や恋人と行くことが多いと思うんです。 ただ、「喫茶店」は1人で行っても楽しいんですよ。
高山:と、言いますと……。
「ここは食事がとても美味しいんです。歌舞伎町で働いている人にどこのお店が美味しいかを聞くと、大体この店を挙げますね。僕のオススメは生姜焼き定食です。」と、アドウェイズ岡村は歌舞伎町の喫茶店「パリジェンヌ」を私たちに勧めてくれた。
岡村:歌舞伎町の喫茶店に行くと、普段接することのない人たちがうじゃうじゃいまして……。僕は基本、友人や家族と行っているわけではないので、自然と周りの話が耳に入ってきてしまうんです。すると、普段聞くことのないようなすごい話をしていて……
高山:すごい話……
岡村:まあ、ざっくり言うと、歌舞伎町ならではの話ですよ。ホストとお客さんが話していたり、謎のお金の話だったりと、普段耳にすることのできない話が飛び交ってますよ。
もちろん、友人と行けば、その人たちとの会話を楽しみますが、1人のときは、周りの人たちの情報が自然に入ってきてしまうんです。
高山:なるほど…。
岡村:ここでしか聞けない人間ドラマはとても楽しいですよ。エンターテイメントの頂点と言っても過言ではありません。また、こういった話を聞くことによって、自分の仕事にも役に立つんですよ。例えば営業マンだったら、アイドリングトークのネタにすることだって出来るんです。
酒を飲まないアドウェイズ岡村だが、飲み会は大好きである。一般的な飲み会の場合、飲み屋の後にカラオケに行くのが定番であるが、アドウェイズ岡村は間に「喫茶店」を挟むのだそうだ。そのワケを聞くと「整うんですよね。喫茶店に行くと」と語っていた。
喫茶店がなかったら、人生が変わってた
岡村:僕、喫茶店がなかったら、今、グレてたと思うんです。
高山:え……。どうしてですか?
岡村:友達って、結局、喫茶店で出来るんじゃないかなって思うんですよ。
高山:すみません、もう少し詳しく説明していただけますか。
岡村:最近はよく「パフォーマンスを上げろ」と言いますよね。僕はその論調に、一矢を報いたいんです。例えば、導き出したい答えがあったとするじゃないですか。その答えが同じものだったとしても、1分でたどり着いた結論と、5時間でたどり着いた結論では想いって全然違うんですよね。そこに行き着くまでの考え方だったり、考え方の違いをお互い認め合ったりと……。苦労してたどり着いた結論では、気持ちの入り方が違うんです。それこそが友情なんだと思うんです。
要するに、パフォーマンスを上げることも大事ですが、仕事と違って人間関係においては、時間をかけて生まれる友情も大事なんですよ。
高山:と、言いますと……
岡村:話し合うことの素晴らしさや、語り合うことの素晴らしさ。そんな「素晴らしさ」を感じさせてくれる場所を、喫茶店は提供してくれているんです。
高山:なるほど……。(それって飲み屋でも良いのでは…?)
アドウェイズ岡村とおくりバント高山のカバンの中の一部。中でもお気に入りなのは、流行りに遅ればせながら購入してハマってしまった「ハンドスピナー」である。
岡村:僕、実はですね、これ言うの初めてだと思うんですけど……。17歳の頃、起業をしていたんですよ。
高山:え? アドウェイズの前にも起業をしていたんですか?
岡村:はい。「グローバルクリーンホワイト」って会社なんですけど。業務用洗剤でお風呂掃除をするっていう。17歳の頃だったので、業務用って言葉を使えばイケると思ったんですよね。友達と2人で立ち上げまして……。
高山:全然知らなかったですね……。結局その会社、どうなったんですか?
岡村:恥ずかしい話、ほとんど売れなかったんです。もう本当に売れなくて……。で、ここからが本題なのですが、会社を潰そうと思っていると友達に話をする際、ルノアールで言ったんです。「ごめん」って。
高山: なるほど……。そういうことだったんですね。
岡村:一見、こういう話は飲み屋とかでも良いと思うんですけど、その時は16歳だからもちろん居酒屋には入れませんし、こういう話はシラフで話したほうがいいと思うんですよね。
酒の力を借りず、コーヒーだけで喫茶店で語り合うからこそ、本当の友達だと思うんです。
高山:めちゃめちゃ深い話ですね……。岡村さんが喫茶店を愛するのには、そんな理由があったんですか。
岡村:はい。喫茶店がこの世になかったら、人生が変わってましたね。確実に。
なので僕が読者の皆さんに伝えたいのは、人生のターニングポイントとなる重要な話は、「喫茶店」で行った方が良いって事です。友人、家族、部下、恋人……どんな人とでもオススメです。飲み屋より真面目な印象も出ますしね。
ただ、誰かがその人生ドラマを聞いているかもしれませんが……(笑)
実は「グローバルクリーンホワイト」以外に、岡村はもう一つ起業を試みていたそうだ。ただそれは資本金の全てをビラまきに使ってしまい、起業に失敗してしまったのだそうである。
編集・構成:長橋諒