岡村陽久の勝手にしやがれ

あなたの相談を岡村流「勝手な解釈」で解決。ITのことから、世の中、男女、不条理まで

【第2回】「匂うんですよね…大逆転の香りが…」話題のgumi國光社長の狙いを大胆予想

アドウェイズ社長の岡村陽久がユーザーの悩みや疑問に答える人生相談シリーズ、第2回。

 

久しぶりに岡村から呼び出しを受けた我々おくりバント取材部。「ユーザーの悩みや疑問に答える」という企画でありながら、サイバーエージェント藤田晋社長についての想いを熱く語り続けてお開きとなった第1回目のリベンジを果たすべく、指定された場所に向かった。

 

着いた場所は西新宿五丁目の「ヘアーサロンヨーコ」。なんでも役員の鹿野晋吾が"床屋のひげ剃り"にハマっているらしく、今日は岡村が誘われたらしい。

 

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 gumiの國光社長のことなど微塵も知らないであろう「ヘアーサロン ヨーコ」のヨーコさん。

 

— …あのー。

 

岡村:(無視して)あれ、鹿野くんは分からなかったんだ?

 

鹿野:いやー、全く分からなかったですね。ラストシーンでびっくりしましたもん。

 

岡村:僕、序盤で大体分かっちゃうんですよ。「あれ、こいつはなんかあるぞ」と。

 

— …あのー、 一体何が分かるんですか?

 

岡村:あ、来てたんですね? 待ってましたよ。今、何を話していたかと言うと、『サスペンス』についてです。実は僕、サスペンス映画やドラマの犯人を当てるのがメチャクチャ得意なんです。映画だったら開始10分ぐらい見れば、8割以上は犯人を当てちゃいますね。

 

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筋金入りのCAマニアであり、筋金入りのサスペンスマニアである岡村。 

 

 …はあ。そんな特技があるんですね。

 

岡村:例えば、去年に放送されていた「家族狩り(http://www.tbs.co.jp/kazokugari/)」ってテレビドラマあったじゃないですか。あれ、第1話見ただけで犯人分かりましたもん。こいつが犯人だなと。もちろん原作は読んでません。

 

 …へー。それ以外に何か当てたことありますか?

 

岡村:そうですね……(無言で宙を見上げる)

 

 …あのー、ないならないでいいんですよ?

 

岡村:…ありますよ。いや、正確には当たっているかのどうかは分からない。ただ、僕の嗅覚が反応しているのは確かです。「こいつは匂うぞ」と…。

 

 それは何でしょう?

 

岡村:お答えしましょう。それは…gumiの國光さんのことです。

 

 …え? gumiの國光社長のことですか。ちなみにgumiは昨年末に東証1部に上場したばかりですが、先日に業績予想を下方修正したことで株価が下がり、かなり叩かれているようですね。

 

岡村:そうです、まさにそのことについてなんです。僕は感じているんですよ。このgumiの動き、常識じゃ測れない何かがあるぞと。ちょっといいですか、今日はこの件について、語らせてもらいますよ!

 

[お詫び]

今日こそはユーザーの皆さんの質問をぶつけるはずだったが、先に岡村のトーク熱に火が点いてしまったようだ。皆さん申し訳ございません。今日は株式会社gumi 代表取締役社長 國光宏尚氏について岡村が語る1日になりました。

 

実は上方修正なんじゃないの?

 

岡村:まずは僕の結論からお伝えしましょう。「あの業績予想の下方修正、実は『上方修正』なんじゃないの?」ってことです。

 

 …はあ。どういうことですか?

 

岡村:説明しましょう。gumiが3月初旬に発表した決算書を見ると、経費を削減していれば下方修正をする必要はなかったように思えるんです。営業利益で当初より約17億円マイナスという発表ですが、これは広告費や外注費を減らす、もしくはアプリを前倒ししてローンチするといった対策をとれば、発表資料を見ても相殺できた額なんですよね。

 

鹿野:…なるほど。僕はサスペンス音痴ですが言いたいことがなんとなく分かってきました。

 

 …え、鹿野さんも? 岡村さん、もう少し説明してもらえますか?

 

岡村:恐らく、國光さんは東証1部上場後に大きな可能性を見つけてしまった。回避できた下方修正をやってまでも、そのチャンスを獲りにいったのではないかと思うんです。つまり、これは今この瞬間だけを見れば下方修正かもしれませんが、長いスパンでみれば上方修正とも言えなくはないということです。

 

 な、なるほど…。

 

岡村:あくまで僕の個人的見解ですよ! ただ、gumiというのはディズニーを超える世界一のエンターテイメント集団になることを標榜している会社ですよ。当たり前のことをやっていたら、そんな大きな目標を達成できるわけないんです。

 

鹿野:うぉーあつい!!

 

 さすが鹿野さん。アドウェイズいちの熱血漢はダテじゃないようですね。

 

鹿野:いえ、蒸しタオルの話です。

 

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筋金入りのCAマニアでありサスペンスマニアである岡村の名推理に水を差した鹿野への視線が厳しい。

 

岡村:…ちなみに、言っておきますけど、アドウェイズはgumiの株を持っています。上場の時にそれなりの額を出資させていただきました。そして、このgumiの株を僕は全く売る気はありませんね。それはシンプルにgumiの掲げる目標・姿勢に共感しているからですよ。

 

 「自分たちが持っている株の価格を下げたくないから、岡村はそんなこと言ってるんだろ」と言う人が出てくるかもしれませが。

 

岡村:断言します。そんな気は全くありません!

 

鹿野:あつい!!

 

岡村:…えーと。もちろん、國光さんにこの件について何か聞いたこともなければ、裏の情報を持っているわけでもありません。僕の本能が当たり前の結論を拒否しているんですよ。匂うんです! まぁ、たまに外れることもあるんですけどね(笑)。

 

ベンチャー企業としての本質

 

岡村:大体、上場企業っていうのはあまり下方修正をしないものなんです。これは悪く言えば「予定調和」です。予想を立てて、その通りに動いているだけです。國光さんにはアドウェイズの半期会議でゲストスピーカーとして講演をしてもらったことがありますが、本質を見る人だという印象を強く受けました。だからこそ、予定調和を取り繕うことよりも、真のベンチャー企業としてビッグチャンスという本質を獲りにいくことを決断したのではないでしょうか。

 

鹿野:gumiはこれから10年間で10回下方修正があっても、30回上方修正があるような、そんな企業かもしれません。

 

岡村:コンテンツ制作のベンチャー企業の中でも、「世界で勝負する…」とか「グローバルな市場で…」といった目標を掲げるところは結構ありますけど、実際に海外で戦えている企業がどれぐらいありますか? gumiはその中で実際に海外で勝っている企業なんですよ。世界で通用するノウハウがあるということです。アドウェイズとしても見習わなければいけないですよね。

 

 いいコンテンツを作れる企業はそれなりにあっても、それを海外展開して実際に数字を出しているところは確かに少ないかもしれません。

 

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世界に通じるコンテンツの話をしながら昼サスを観る三人。 

 

岡村:大体ですよ、「下方修正は前々から見えていたのに、それを隠したんじゃないか」というようなことがネット上の一部で言われてるみたいですが、そんなことは簡単にはできませんよ。gumi上場の主幹事だった野村證券が許さないはずです。あそこのチェックは本当に厳しいですから。野村證券の凄さを僕に語らせれば、数時間は必要ですよ!

 

 アドウェイズの上場時に、身をもって野村證券の厳しいチェックを感じたわけですね。

 

岡村:いや、弊社は日興証券さん。

 

一同:え? これだけ言っておいて野村證券じゃないんですか?

 

岡村:こればっかりはタイミングと縁ですからね(笑)。日興さんには本当にお世話になりました。

 

当日のひげ剃りの様子を動画にしました。

 

思い出す07ショック。会社の危機が今の礎に

 

鹿野:今のgumiの状況を見て思うのが、2007年のアドウェイズと似た状況にあるのかなということなんですよね。

 

岡村:確かに。『07(ゼロナナ)ショック』(※)の時と似てるかもしれない。うちも上場して半年後ぐらいのことでしたしね。

 

(※注1)「07(ゼロナナ)ショック」
アドウェイズの広告収入の中心となる顧客はクレジットカード会社やキャッシングカード会社だったが、東証マザーズ上場から約半年後の2007年頭、上限金利の引き下げにより各社の広告費が半減。アドウェイズは新入社員の大量採用を進めていたことも併せて赤字が大幅に拡大。新規事業の撤退や社内体制の改革だけでなく、岡村自身も役員報酬を8割カットし、4畳半風呂なしアパートに移り住んだ。

 

 あの頃はどういった心境だったんですか?

 

岡村:本当にまいりましたよ。何度も挫けそうになりました。色々な悔しい目にもあいました。例えば、ある外資系証券会社のことですが、07ショックまでは先方での会議の時、部屋の上座に必ず案内されていました。それが、07ショック後は態度が一変ですよ。呼び出されてその証券会社に行ったら、相手が先に上座に座るんです。

 

 客を上座に案内しないのは失礼だということですね?

 

岡村:上座じゃなきゃ嫌だとか、そんなことはどうでもいいの!

 

 …はい。

 

岡村:頼みますよ! 僕が言いたいのは席の上下がどうこうじゃなくて、やっぱりそんな露骨な手のひら返しをされると、本当に屈辱を感じるということです。絶対に見返してやると思いました。でも、あのおかげで闘志が湧きましたら、今では逆に感謝しているぐらいです。担当者のことは絶対に忘れないですけどね(笑)。

 

f:id:okuri_bunt:20150323064703j:plain「く、苦しい」。蒸しタオルごしに2007年へ思いを馳せている様子の岡村。続けて「あつい!」。熱いものがこみ上げているようだ。

 

 今では07ショックのことをどのように振り返りますか?

 

岡村:そうですね。あの時は本当にきつかったんです。でも、今となって振り返ると、あの2007年があったから、今のアドウェイズがあるということです。内定を出していた新入社員が150人いましたが、例えば内定取消をして経費削減することもできたんです。でも、僕たちは未来に賭けました。そして、あの2007年に入ってきてくれた新入社員が今はアドウェイズの中心を担ってくれています。実際、役員にも2007年入社組が2名いますしね。

 

鹿野:僕もその一人ですね。内定取消されずにアドウェイズに入れてよかったです(笑)。

 

岡村:そう考えるとあの2007年には苦い思い出も含めて『感謝』という言葉が一番相応しいのかもしれません。

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窓からターゲットを狙う三流サスペンスの犯人にしか見えない、おくりバント高山。

 

高山:苦しい時代に仲間になった人たちが今の会社を支えているってことですが、僕も2007年にアドウェイズに中途で入ったんで、忘れないでください。『おくりバント』代表として、『アドウェイズ』までも背負っていけるような人間になりたいです。

 

岡村:いえ、高山さんはホームランを狙わないでください。送りバントで十分だから。とりあえず、三流サスペンスの犯人みたいな、その汚いヒゲは剃りましょう。気分転換して帰った方がいいですよ。ヨーコさん、お願いします!

■撮影協力『ヘアーサロン ヨーコ』

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東京都新宿区西新宿5-22-2

*お電話でのお問い合わせはご遠慮ください。

 

高山が善人に生まれ変わった様子です。

 

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関連記事
 『岡村陽久の前のめり人生道』:日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20140808/269829/


※本記事および対談の内容は株式会社グミ、あるいは國光宏尚氏とは一切関係がありません。岡村陽久、鹿野晋吾、および株式会社おくりバントによる創作です。

■岡村陽久への質問募集中
ブログで岡村に答えてほしい疑問質問を受け付けています。おくりバントFacebookページにメッセージで内容をお送りください。

 

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編集・構成:小沼朋治

文: 是枝勉

写真:堀裕輝

 

【第1回】「誰もわかってない!」漢(おとこ)岡村がサイバー藤田社長炎上問題を斬る

アドウェイズ社長の岡村陽久がユーザーの悩みや疑問に答える人生相談シリーズ。

 

第1回目の話を聞きに、指定された北新宿の焼き肉屋で岡村と対面。早速ひとつめの質問をぶつけようとすると、岡村の方から今回はどうしても言いたいことがあるという。それは、サイバーエージェント(以下、CA)の藤田晋社長の炎上問題のことだった。

 

Yahoo!ニュース - 炎上は計算? 藤田社長ブログ(2014年10月3日(金)掲載

 

藤田社長がNIKKEIに掲載した記事で炎上した件について、CAに3回落ちた自称業界一のサイバーマニア、アドウェイズCEO岡村陽久と、アドウェイズ人事戦略室西久保剛の二人が、CAについて、藤田社長の真意について、あくまでも各人の「勝手な解釈」という前提で語り始めた。

 

f:id:okuri_bunt:20141101221209j:plainCAの藤田社長のことなど微塵も知らないであろう焼肉「若葉」の店主と奥様。

 

相手の人生まで想って怒る、それがサイバーエージェント

 

今回の騒動で藤田さんを批判する人たちはなにもわかっていない、というのは一体どういうことですか?

  

岡村:まず、藤田さんはあの記事を誰に向かって話してると思いますか? 辞めた本人に、ですよ。

 

本人、ですか?

 

岡村:あの記事は本人に向けた言葉です。藤田さんは感情に任せて単純に怒るような人じゃないですよ。怒る時は相手の人生まで考えて怒るような人なんだから。

 

f:id:okuri_bunt:20141101221317j:plain飲む水はAmeba waterと決めている筋金入のCAマニア岡村。 

 

退職した本人になにかを伝えたかったんですか?

 

岡村:人の信頼を裏切るような人間になってほしくない、ってことです。

今回退職した人って、会社から信頼されて任された事業を途中で放り出して辞めたわけでしょ。会社に対してだけじゃなくて、一緒に働いてた仲間とか取引先企業も裏切ったことになる。これは人として絶対にやっちゃいけないことですよ。藤田さんはこの裏切り行為に対して激怒したわけで、裏を返せば、そんな人間になってほしくない、って思いがあるんです。

 

本人に対する単純な怒りなんて、藤田さんにはなかったと。

 

岡村:そうです。まあ、僕の勝手な解釈ですけど。ネットで批判してる人たちは誰もCAという会社をわかってないけど、どんな会社なのか、社員に会えばわかるんですよ。みんな仲間をとても大切にする人たちなんです。だから、怒るときは相手の人生のことまで考えて、というのは藤田さんだけじゃないですよ。

 

CA社員の身体からにじみ出すサイバー汁とは?

 

西久保:こんな話があるんですけど。昔、CAの担当をしていたアドウェイズの新卒社員がとんでもないミスをしたことがあったんです。その社員の上司が一緒に謝罪に行って「申し訳ありませんでした。担当を替えます」と言ったところ、CAの責任者の方が激怒したんです。「バカヤロウ!」と。そんな風に怒鳴られたら、担当を替えるだけじゃ許されないのかと思うじゃないですか。でも、次に出た言葉は「ミスした社員にもう一度チャンスを与えるのが上司の責任だろう。自分の部下を信用できないような会社と付き合えるか」って。

 

f:id:okuri_bunt:20141101222857j:plainもちろん西久保が 飲む水もAmeba water。ちなみに藤田社長と面識はない。

 

岡村:藤田さんが記事で書いてる「挑戦した敗者にはセカンドチャンスを」って言葉そのままでしょ。サイバー汁がドバドバ溢れてる。

 

なんですか、そのサイバー汁って? 

 

岡村: CAらしさ、藤田さんの魂、っていうのか、社員の間には藤田マインドがしっかり浸透して、社員の身体から滲み出てくるんですよ。それを僕らはサイバー汁って呼んでて。

 

えーと、具体的にはどういうことなんでしょう…?

 

岡村:仕事にとことん一生懸命なこと。そして、とにかく本当の意味で人を大切にする。一番の特徴はこの2点です。一緒に仕事する仲間だけじゃなくて取引先、業界全体のことも良くしたいと思いながら働いてる人がたくさんいるんです。こういう人は自然と身体からサイバー汁がにじみ出てくる。匂いもわかる(笑) 

 

f:id:okuri_bunt:20141101223347j:plain手前が名物「天使のとりナンコツ」。Ameba waterとの相性も抜群。

 

f:id:okuri_bunt:20141101223820j:plain同じく名物「キングホルモン」。言うまでもなくAmeba waterとの相性は抜群だ。

 

サイバー汁にも負けない、義理と人情が自慢のアド汁

 

アドウェイズにはそういう汁的なものはないんですかね?

 

西久保:ありますよアドウェイズ汁、アド汁。負けてないですからねサイバー汁には。

 

岡村:結構似てるんですけどね。人を大切にする、とか、仕事にとことん一生懸命、というのは共通してます。うちの特徴は、義理と人情。

 

西久保:ある意味、時代遅れなくらい思いやりの心を重視してるのがアド汁ですね。万人に受け入れられるサイバー汁と違って、アド汁はちょっと人を選びますね。腹壊す人もいるかもしれない(笑)

 

—飲むと健康になりそうな名前なんですけどね。アド汁。

 

新規事業の強烈なプレッシャーから逃げてしまったのでは?

 

岡村:これはあくまで僕の勝手な解釈だけれど、今回辞めた人だってサイバー汁を持った人だったんじゃないかと思うんですよ。

 

新規事業を任されていたくらいだからサイバー汁たっぷりだったんでしょうね。そんな人がなんで辞めるんでしょう?

 

岡村:辛かったんでしょう。新規事業って要は絵に描いた餅じゃないですか。コストと時間ばかりかかって、軌道に乗るまでは売上げがまるで出ない。その強烈なプレッシャーに耐えられなくて逃げ出したかったのかもしれない。そんなときに競合他社からいい条件で誘われて、辞めちゃったんじゃないかな。

 

なるほど。そして、藤田さんは本人に対してではなく、周囲の人を裏切った、行為そのものに対して激怒した。人の信頼を裏切るような人になって欲しくなかった、という思いをこめて激怒したと。これって、CAの人から直接聞いたことなんですかね?

 

岡村:いや、僕の勝手な解釈です。

 

f:id:okuri_bunt:20141101224052j:plain藤田社長の考えは手に取るように分かる!と語る岡村だがCAの採用には3度落ちている。

 

岡村が逃げ出した17の夜

 

わかりました。でも、本人のためを思って怒るのなら直接呼び出すとか、せめてブログでもよかったのに、日経新聞というマスメディアで公開する必要はあるんですか?

 

岡村:日経で公開する必要があったんですよ。同じことを繰り返させないためには、本当に強烈にやらなくちゃ本人には伝わらないんです。あの、みんな、辛いことから逃げた記憶ってないですか?今回の話で僕自身の苦い体験を思い出したんですけど。

 

どんな体験ですか?

 

岡村:実は僕、会社をクビになったことがあるんです。

 

え、クビですか?

 

岡村:17歳のときに布団の訪問販売の会社で働いてたんですけど、これがまるっきり売れなかった。売れないことが辛くて辛くて、毎日外回りに出ると喫茶店で漫画読んでサボってたんですよ。この布団屋の社長は息子くらいの年の僕を本当にかわいがってくれてたんですけど、サボってたことが社長に勘付かれて、ある日、寮の部屋に乗り込んできてぶん殴られたんです。「お前は戦力外や!」て。

 

な、なるほど。

 

岡村:殴るだけじゃないですよ。住んでいた寮まで追い出されたんですよ。息子同然にかわいがられてた僕としては、完全に想定外だった。僕も社長を恨みましたよ。まだガキの僕から住むところまで奪うことないだろうと。これは犯罪なんじゃないかって(笑)。とにかく恨んで恨んで…。でも、よく考えたら明らかに僕が悪いわけじゃないですか。サボって漫画読んでたわけだから。それで辛い仕事から逃げていたことを後悔するようになって。ちなみに、今でもめっちゃくちゃ後悔してることですよ。

 

後悔することで社長を恨む気持ちはなくなったんですか?

 

岡村:恨みから一転して感謝するようになりましたよ。今の僕があるのは、あの経験のおかげです。ちなみに、その後入社した空調設備の会社で仕事がうまく行った頃、布団屋の社長に会いに行ったんです。そしたら社長がすごく喜んでくれたんですよね。結論、殴られて寮を追い出されたことで、僕は自分が犯した過ちの重さを実感できたんです。社長もそこまでわかっていて心を鬼にしてくれてたんですよ。ただクビになるだけ、ただ殴られるだけだったら、ちょっと反省するだけで、次の会社でも、いや、もしかしたら一生同じことを繰り返してたかもしれない。卑怯な人間になってたかもしれない。藤田さんも、本当にその人のことを思ってるからこそ、日経に記事を出したんです。

 

愛情の裏返しですよ。

 

f:id:okuri_bunt:20141101224519j:plain愛情の裏返しの横で肉を裏返す、おくりバント高山。自己犠牲の精神で黙々と焼く。

f:id:okuri_bunt:20141101224718j:plain焼きが甘いとトングを取り上げられた高山。岡村から戦力外通告を受けここで退店。

 

なるほど!藤田さんがあえて日経で記事を公開したことは、本人に過ちの大きさを実感して二度と繰り返してほしくない、という意味だったんですね?

 

岡村:その通り。やっぱ藤田さん、すげー。

 

ちなみに、今おっしゃった藤田さんの真意というのは…?

 

岡村:もちろん、僕の勝手な解釈です。

 

はい。

 

毎月100人の社員とランチを一緒に食べる藤田社長

 

西久保:今、岡村が言ったことはもちろんそうなんですけど、藤田さんは組織のことも考えてるんだと思いますよ。ご本人が「一罰百戒」と表現しているように、今回の事例で社長としての考え方、態度をはっきりと全社員に伝えて、今後の抑止力にしていると思いますね。だって、藤田さんて社員一人一人のことをとてもよく知ってる人なんですよ。50人体制の人事部が全社員を3ヶ月ごとに面談して、藤田さん自身も毎月100人の社員とランチを一緒に食べて広く交流する。会社としてたくさんの制度を作っていく際にも、その制度で困る、嫌がる人間は誰か?ということを常に分析している人ですからね。

 

岡村:毎月100人の社員とメシに行く社長なんていないですよ。

 

西久保:そこまでやる人ですから、ニュースメディアを使って炎上することも計算に入れた上で、藤田さんの真意は社員にちゃんと伝わってると思います。

 

それは勝手な解釈と判断してよろしいですか?

 

西久保:はい。解釈というか、ほとんど希望です。

 

岡村:今後同じような人が出ないように。二度とこういう人を出したくない、という藤田さんなりのメッセージだったわけで。それは怒りとは真逆の懺悔に近い心境じゃないでしょうか。社内限定で発信するより、社員全体のためを考えたら日経で正解だった。

 

なるほど。藤田さんの行動はあくまでも辞めた本人と社員みんなの今後のためだったというわけですね。

 

岡村:その通りです。今回辞めた社員もいつか藤田さんに感謝して挨拶しに来ると思いますよ。

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二人の愛読書はもちろん「起業家」。Ameba waterとの相性はもちろん抜群だ。

 

アドウェイズを辞めても、ずっと社員だと思ってる

 

アドウェイズも辞めた人たちがいると思いますけど、そういう人が会いに来たら岡村さんはどうしますか?

 

岡村:うちもこれまでたくさんの社員が辞めていったけど、今いる社員も辞めた社員もみんなアドウェイズの社員だと思ってる。今だけ他の会社に出向してる、て僕は考えるようにしてるんですよ。まあ、でも、何回も出たり入ったりされても困るんで、再入社はひとり5回まで、と厳しく決めてます。

 

5回とはファイブタイムスチャンピオンと呼ばれた、アーネストホースのK-1優勝回数と奇しくも同じですね。今日は長い時間お話しいただき、どうもありがとうございました。

 

岡村:ありがとうございました。ところで、お腹減ってるでしょ?肉食べましょう。すいませーん、キングホルモン4人前。どんどん持ってきて!

 

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サイバーエージェント入社希望が3回撃沈! アドウェイズ社長が語ったジェットコースター半生 | HRナビ

 

※本記事および対談の内容は株式会社サイバーエージェントとは一切関係がありません。

岡村陽久氏、西久保剛氏、および株式会社おくりバントによる創作です。

 

f:id:okuri_bunt:20141101230205j:plain藤田社長の「起業家」を1名様にプレゼント。岡村のサイン入り。

 

f:id:okuri_bunt:20141101230223j:plain応募はおくりバントFacebookページから「プレゼント希望」とメッセージを送ってください。※個人情報は送らないようにご注意ください。当選者には折り返しメッセージをお送りします。

 

■岡村陽久への質問募集中

ブログで岡村に答えてほしい疑問質問を受け付けています。おくりバントFacebookページに内容をメッセージでお送りください。

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■撮影協力『若葉』

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東京都新宿区北新宿2-2-5 03-3362-6617

噛めば噛むほど旨味が拡がる鶏ナンコツやキングホルモンが人気。カウンターと小さな座敷のみのお店なので事前に予約を。

 

編集・構成:小沼朋治

写真:堀裕輝