岡村陽久の勝手にしやがれ

あなたの相談を岡村流「勝手な解釈」で解決。ITのことから、世の中、男女、不条理まで

【第7回】アドウェイズ岡村がもっとも畏れる男が登場!

アドウェイズ社長の岡村陽久がユーザーの悩みや疑問に答える人生相談シリーズ、第7回。

 

早速、読者からの質問を・・・と思いましたが、年末特別号と題しまして、岡村の恩人をお招きしてのインタビューを行いました。お招きしたのは、サムライ・アドウェイズ取締役の西村博行。10代の岡村が一番怒られて、一番褒められた人物です。

 

インタビュアー:高山洋平(株式会社おくりバント)

 

高山:まず、2人の関係からお伺いできますか?

 

岡村:10代の頃、新大阪にある換気扇フィルターの訪問販売会社に転職したんですが、その営業所の所長が西村だったんです。今の僕があるのは、いや、アドウェイズがあるのは西村所長のおかげと断言できる恩人です。

 

高山:所長、自己紹介をお願いできますか。

 

西村:西村と申します。現在は、アドウェイズの子会社サムライ・アドウェイズで新規事業を担当しております。また、毎年アドウェイズの新卒研修の講師をやっておりまして今年で5年になりました。現在46歳で、岡村との出会いは約20年前、訪問販売会社「株式会社近畿設備」の新大阪営業所の所長時代でした。

 

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 にこやかな西村所長。正直、全然怖そうではない。

 

高山:なるほど、それで所長と呼ばれてるんですね。アドウェイズの新卒研修の話は後ほど詳しく伺うとして、当時の所長の印象を教えてください。

 

岡村:もう神様ですよ!まだ僕は10代の若造だったけど、所長と言ったら営業所のエースで完全に雲の上の存在でした。

 

西村:でもね、岡村は入社初日にいきなり私のところに来て「所長、僕は日曜日に休むくらいなら、東京帰ります!日曜日も働かせてください!」って、すごい勢いで怒鳴り込んできて(笑)。

 

岡村:はい、東京から大阪に来て、正式に入社したのが確か土曜日。身体が疼いて疼いて、月曜日まで、どうしても我慢ができなくって。

 

高山:神様に怒鳴り込むって完全に常軌を逸してますね。僕だったら、大阪観光で食い倒れて、月曜日に出社できるかも危ういですね。

 

岡村:・・・。

 

西村:訪問販売は車に商材を積んで2人1組で回るのが基本だったんですが、岡村は免許を持ってなかったんですよ。なので、先輩社員にお願いして乗っけてもらえと言ったんです。

 

岡村:で、「今日入社した岡村です!僕はまだ免許を持ってません!お休み中のところ申し訳ないですが、乗っけてもらえないでしょうか!」って、先輩社員にすぐにお願いしたんですけど、全部断られたんですよ(笑)。

 

西村:たぶん、勢いありすぎて怖がられたんでしょうね・・・。それで、さすがに諦めるだろうなって思ったんですけど、さらにすごい勢いで私のところに来て「車がないんで歩いて行ってきます!換気扇フィルターはデカくて担げないので、それ以外の商品があれば卸してくれないでしょうかっ!」って。で、ドアストッパー30本入れたリュックサックを背負って新大阪の街に消えて行きました。

 

高山:角刈りの青年がスーツにリュック背負って、中身が全部ドアストッパーって、かなり怪しいですね。で、ドアストッパー売りまくったんですか?

 

岡村:いや、それが1本も売れなくて(笑)。怪しい上に、その時は商品の知識やセールストークも、大阪の地理も何ひとつわかっていなくて(苦笑)。

 

西村:でもね、結局1本も売れませんでしたけど「こいつはイケる!」って、初日で確信したんです。帰社してからも、「くそっ!くそっ!」って、血走った目で死ぬほど悔しがっていて。入社初日で、そんな強烈な印象を与えたのって、後にも先にも岡村だけだったんですよ。当時は、毎週水曜日に新人が4人入社してきて、翌週の火曜日までに4人辞めて、また水曜日に4人入ってくる、そんな目まぐるしい状況でした。年間で約200人入社して、残るのはたったの4~5人で、あっという間に辞めていく人ばかり。だから、ほとんどの人が印象なんてない中で、強烈なインパクトでしたね。

 

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 当時の血走っていた目を再現する岡村。正直、すごく怖い・・・。

 

■できない理由10挙げるより、できる理由を1つ考えろ!

 

岡村:高校を中退して入社したアルミ製品販売会社では、すぐに営業成績でトップに立った。だから気の緩みというか慢心が僕の心のどこかにあったんでしょう。それを叩き潰して、0から営業のイロハを叩き込んでくれたのが所長なんですよ。とにかく言い訳が大嫌いで絶対に許さない。

 

高山:たとえば、どんな言い訳をしていたんですか?

 

岡村:僕は天気の言い訳が好きだったんですよ(笑)。だって、いくら頑張っても、さすがに天候には勝てないと普通は思うでしょ。で、「今日は大雨で売れませんでした」って所長に報告したことがあったんですよ。そしたら、鬼の形相でメチャメチャ怒られて・・・。

 

西村:そりゃそうですよ。訪問販売は一般家庭のお客様が中心だったんですけど、大雨の日は、み~んな外に出ないで家にいるんだから。こんなチャンスないじゃないですか。

 

高山:じゃあ、晴れてる日は売れないんですかね?

 

西村:バカやろー!晴れた日はお客様の気分も晴れ晴れしてて、気持ちいいに決まってるじゃないですか!? そんな日は「よし!換気扇でも取り替えるか!」って気分になるんですよ!

 

岡村:もう、毎日こんな感じなんですよ(笑)。極めつけは大雪の日。さすがに営業車も動かなくて、この日ばっかりは所長も怒らないだろうと思ったんですけどね・・・。

 

高山:所長、怒ったんですか?

 

西村:はい(笑)。「雪が降ったのは、岡村!お前の気合が足りないんじゃ~い!」と。まあ、本当に天候不順が個人のせいだなんて、そんな理不尽なこと思ってないですよ。雪が降ったら、売れない、売れなくてもしょうがないって、勝手に思い込んで、テンション落としたのはお前のせいじゃい!ってことなんです。自分の中で、「できない理由」を作って勝手に弱気になるなと。そんなときこそ、自分を自分で奮い立たせろと。

 

岡村:それからは「天気悪いな!よし、今日は売れるぞ!」って、思うようになったんですけど、面白いように売れるようになりました。自分の気持ち1つで、営業成績がこれほどまで変わるんだって実感した瞬間でした。

 

西村:サッカーでも野球でも同じじゃないですか。元気な時、いい仕事ができるのは当たり前なんです。身体が疲れた時、気持ちが辛い時、そんな時にこそ踏ん張ってパフォーマンスを落とさずに頑張る、結果を残せるのがプロだと思うんですよ。

 

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「雪が降ったのは、岡村!お前のせいじゃい!」を鬼の形相で再現する所長。 やっぱり怖かった!

  

岡村:アドウェイズには、10個の行動指針があるんですが、その中の「できる理由を考えろ」という言葉は、所長の教えなんですよ。できない理由、逃げる理由はいくらでも挙げられる。でも、そんなこと考えている暇があれば、できる理由を1つでも考えろって。

 

高山:僕も、ダイエットをできない理由ならいくつでも挙げられます。甘いものを絶ったら、糖質が足りなくて頭がまわらない。痩せてしまったらキャラが立たなくなる。できる理由なんて、考える暇さえありません。

 

岡村:・・・。

 

高山:ちなみに、所長が考えた「できる理由」で記憶に残ってるものってありますか?

 

岡村:やっぱりクリスマスですね。クリスマスの日に訪問販売するのって、本当ツライんですよ。ピンポーンって鳴らすと、だいたい子供が飛び出してくる。「わ~!パパァ~!!」って満面の笑顔とパーティーグッズで・・・(苦笑)。で、「え、誰、このおじさん・・・」と暗い顔になる。我々だけじゃなく、ほとんどの訪問営業マンにとって、厳しい日でしょうね。業界の常識的にも売れなくて仕方ないんですよ。で、そんな我々営業マンの気持ちを悟ってか、所長はこう言ったんです。「サンタは煙突からやってくる。でも現代は煙突はない。じゃあ、どこだ!岡村!」。僕はベランダですか?って。所長は「それじゃ、泥棒だろ!」って。

 

高山:はい。で、所長、答えは?

 

西村:換気扇です(笑)。現代の煙突は、どう考えても換気扇だろうと。で、汚れてると、サンタが入りにくいから、ピッカピカの新品のフィルターに変えるのが大切だって。

 

岡村:それを聞いたとき、曇ってた営業マンたちの表情が一瞬でパッと晴れて、「クリスマスこそフィルター商戦だ!」って一気に盛り上がりました。普通に考えたら換気扇なんか狭くて通れるはずないんですけどね(笑)。子供が飛び出してくると、それまでは「パパじゃなくてゴメン!」って、罪悪感でいっぱいだったんですけど、それからは「換気扇汚いと、サンタさんが困っちゃうんだよ~」って笑顔で子供と話せるようになりました。結果、全国に約35箇所の営業所があったんですが、新大阪営業所は断トツの1位で記録的な売り上げでしたね。

 

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 「換気扇のフィルターを交換すると、こ〜んな大きなプレゼントを持ったサンタさんが来るよ」と当時のトークを再現する岡村。

 

高山:所長がアドウェイズの新卒研修を担当するようになった理由は何なんですか?

 

岡村:近畿設備での経験、所長からの教えは、僕の中で心の支えになってるんですよ。当時の体験を思い出せば、どんな辛いことがあっても乗り越えられる、達成できるって。それを新卒のみんなにも体験して欲しいと思ったのが一番の理由ですね。ちなみにですが、褒めるのも抜群にうまいんですよ(笑)。

 

高山:僕は社員に大好きな映画のVHSのビデオテープをあげたりしてますが、たとえばどんな風に褒めるんですか?

 

岡村:VHSとかは置いといて、モノじゃないんですよ・・・。気持ちを動かすのは気持ちなんです。たとえば、営業所のホワイトボードには毎日、全員の営業成績が書き出されるんですが(通称:西村グラフ)、成績がいい場合は黒いマーカーででデカデカと他の人からもよく見えるように、普通の場合は青いマーカーでサラッと、悪い場合は赤いマーカーで恥ずかしいくらい小さく書かれる。そのグラフの強弱が絶妙で心を揺さぶるんですよ。特に成績がよかった、ある日のことですが、帰社してホワイトボードを見たらピンクで超特大に数字が書かれてることがあって。「なにこれすげー!こんなのはじめて!」って感動したんですが、よくよく考えるとピンクのマーカーなんてないじゃないですか。触ってみたら全然消えなくて油性のマジックだったんですよ(笑)。で、みんなが帰った終電間際にアルコールで落としてる姿見て、心から褒めてくれてるんだなって。翌日から、またあの"西村ピンク"が欲しいって身体が震えるようになって、しばらくの間、ピンク中毒になっちゃいましたね。

 

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これが10代の岡村青年を虜にした「西村グラフ」(簡易再現版)だ!同じ時間を過ごした者同士にしかわからない魅力があるのであろう。

 

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近畿設備OBによる再現大会の様相を呈してきた・・・。 

 

高山:なるほど(笑)。一時期は、林家ペーパーばりのピンク好きだったんですね。ところで所長がそもそもアドウェイズに入社した経緯は?

 

岡村:2001年にアドウェイズを創業してからも、所長とは定期的に連絡は取っていたんです。苦しいときに電話すると元気になれるんで「所長、気合いれてください!」って、いきなり電話して。

 

西村:ほとんどが「おっしゃあ!頑張れ!!」って、ひとこと言って切るんですけど(笑)。で、2011年ですかね。僕もそのときは独立していたんですけど、ちょうど次のステップを模索している時でした。それで、岡村と電話してたときに「やりたいことがあるんで、所長、東京来てください!」と。僕は2つ返事でOKして、大阪からすぐに東京に来ました。一番の理由は、岡村と仕事をした数年が私にとっても忘れられない成長体験になっていたからなんです。私が所長で、岡村が部下という関係でしたが、彼の本気が社内をひとつにして、とんでもない成績を上げる営業所になった。その熱気をもう一度感じたかったんです。

 

岡村:インターネットの世界って、一般的にはサービス・プロダクト勝負なんですけど、当時、僕はそれだけでは駄目だと感じ始めていたんです。このままでは競合と差別化ができない、営業力・人間力を強化しないとアドウェイズは生き残ることはできないって。そんなとき、西村の声を聞いて「営業力・人間力をアドウェイズに注入できるのは、この人しかいない!」って思ったんです。近畿設備はバリバリの営業会社でしたから、売り上げがすべてだったんですよ。昇進基準っていうのは明確にあって、換気扇フィルターを2ヶ月連続で250本売れたら主任、350本売れたら係長、400本売れたら課長という感じになっていて。達成すれば褒められるし昇進もできる、未達なら怒られるし降格する。0本のときなんて「立ってるだけで売り上げてる自動販売機の方がマシだ!」「座るな!椅子の方がまだ役に立ってるぞ!」なんて言われたりもして(苦笑)。

 

高山:結果も大事ですが、プロセスを評価するっていうのはなかったんですか?

 

西村:そりゃありますよ。でも、それは絶対に口に出しては言いませんでした。プロセスを評価するって言うと、達成できなくても仕方ないとか、過程を評価されるように逃げちゃう場合があるじゃないですか。0か100、そういう結果原理主義の中でこそ、身につく心技体って私は絶対にあると思うんですよ。最後まで絶対に諦めない、やればできるんだっていうね。それは、仕事の中のいろんなケースで修羅場をくぐる経験をしてこそ、身につくものじゃないですか。ただ、プロセスを評価しなくても、本気でやってる人は周りが絶対に見捨てないんです。たとえば、岡村は係長時代に、昇進まで数本足りないという部下に、最後の最後で、自分の数字をわけてあげたりしていました。

 

岡村:それは僕自身にも、主任への昇格がかかってるときに、当時の上司がやってくれたんです。数字は営業マンの命だから、そう簡単に渡せるはずがない。でも、個人の成績も大事だけど、チームの成績がもっと大事だっていう思いが、所長の営業所にはあったからでしょうね。すごく感動しましたね。

 

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岡村が係長だった時代の部下、サムライ・アドウェイズの滝谷。「岡村から数字をもらったのは私です。今日はビールをもらいました」とのことで、完全な草食系だ。

 

高山:アドウェイズの研修は、この2年間、本当に偶然、おくりバントの横で行われてるんですが、所長の怒号も時たま聞こえてきて怖いです(笑)。

 

岡村:所長には、やりたいようにやってくださいと言ってるので。まあ、僕の経験からしても怒号くらいは普通でしょう(笑)。研修してる当事者って大変なんです。毎年、いろんなところから、僕にも心配の声やクレームが来ますよ。でもね、所長は相手の長い社会人人生を考えて怒ってるってことですし、ひとつ言えることは、研修の成果が出るのはすぐにじゃなくて、半年~1年経ってからなんです。毎年、入社から半年経過した時点であらためて研修をやってるんですが、その時、「新卒研修、来年はやるべきかな?」ってたずねると、「次の新卒の人たちにも是非やってください!」って、言うんです。半年経った今、心の支えになっているし、一緒に乗り越えた同期との絆も強いものになっていると。

 

西村:それは本当に嬉しいですね。

 

岡村:アドウェイズでは上司と部下という関係ですが、僕を育ててくれたのは所長で、僕はいつまでも”西村チルドレン”です。ブログで身内を褒めるのって、読者の方からしたら少し気持ち悪いのかもしれませんが、所長にはどうしても公に感謝を伝えたかったんです。年末ということで、皆さまご勘弁ください。

 

高山:僕も新人時代に所長の研修を受けたかったですよ!

 

岡村:あ、そうだ。おくりバントは最近、調子も悪いし、ちょうど研修が必要だと本気で思ってました。ライザップも行ってないようですし、先に心のダイエットをしましょうか。

 

(了)

  

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インタビュー終了後、中華料理屋で乾杯する近畿設備OBの3人と、岡村から「おくりバント研修」を命じられて、一気に表情が曇った1匹。

 

■おまけ 近畿設備OB写真コーナー

 

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新大阪では毎晩、所長が飲みに連れて行ってくれたとのこと。

 

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 近畿設備OBの杉山さん(最年長)。インタビューの途中で寝てしまい、中華料理屋にたどり着けず・・・。

 

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同じくOBの遠藤さん。簡易再現版「西村グラフ」に課長として登場。写真は、新卒研修に助っ人で参加した時の一コマ。

 

編集・構成:小沼朋治 

写真:上野朝之